夏の旅2008


昨年に引き続き、今年の夏も東北へ行くことになった。青森と十和田の新しい美術館を見る駆け足の旅だが、いくつか寄り道もした。まずは、浦和から東北道から八戸道を500km以上、一戸ICを降りてすぐ御所野遺跡に寄った。ゴルフ場のような広大な敷地に、縄文の家がぽつんと建っている。建っているというよりは、地面から盛り上がっているという方がいいかもしれない。僕はこんなような丘というか緑のカタマリがとても好きなのだ。




そこからは国道4号線を十和田方面へ走る。途中で、新郷村西越(サイゴシ)という集落に寄る。ここには屋根のてっぺんに植物を植えている芝棟の家が何軒かある。最近は藤森さんのニラハウスなんかで知られるようになったあれである。今も人きちんと住んでいることを伺わせる家もあるし、空き家のようになっている家もあるけれど、どれも縄文時代から受け継がれているようなスピリッツが感じられて素敵だ。


こういう見上げのアングルで見ると、これもまさしく小さな丘だ。





西澤立衛さん設計の十和田市現代美術館は、敷地周囲との関係が面白い。このあたりは十和田市の官庁街ということで碁盤の目のような街区割りになっており、ゆったりとした敷地が並んでいる。そこに、ランダムな向きでキューブが置かれているので、街区スケールで見ると建築自体が展示されているように見える。青山あたりでこんなつくり方をしたら、店舗ビルとして街並みにすっぽりと埋没してしまうかもしれない。


隣地との境界に塀はない。こういう余ったスペースが建物を引き立て、内部の小さな庭のようなスペースとつながって、プランニングの考え方がとてもクリアに感じられる。





翌日、安藤忠雄さん設計の青森国際芸術センターに寄ったが、残念ながら展示はやっておらず、建物だけを見てきた。スケール的にはそれほど大きくはないのだが、小山のような円形劇場とか谷をまたぐ橋のような創作棟などがあって土木的な感覚。





昼頃に、目的の青木淳さん設計の青森県立美術館へ着いた。十和田市現代美術館も「迷路」だったが、ここも迷路である。ただし、十和田の風通しのよい迷路とは違って、息の詰まるような迷宮のようなプランニング。観覧の順路も昇ったり降りたりして、なかにいても建物全体の平面形とそのなかでの現在位置が想像しにくい。


ひとしきり展示を見終わって、全体を解明するべく、外や中をうろつき回るのは楽しかった。創作ヤードやキッズルームなど無料ゾーンは広々としているし、奈良美智さんの「あおもり犬」を見に行くにも建物の隙間を通ったり橋を渡ったりしてかなり変化に富む道のりだ。イタリアあたりの山岳城塞都市を散策しているような楽しさに近いかもしれない。これもやっぱり縄文スピリッツあふれる丘なのだ、と言ったらこじつけかもしれないけれど。

帰りがけ、近くの三内温泉に寄った。レトロな建物で、ネオンサインの「温泉」の文字が消えてしまっているくらい商売っ気のなさそうな、地元の人しか来なさそうな雰囲気なのだが、浴室に入るなり硫黄の匂いが立ちこめ、10mくらいある大きな浴槽にごうごうと湯が注がれている。湯はかなり熱い。それでいて390円。美術館帰りにおすすめです。