冬の妻有


2006年の越後妻有トリエンナーレに出品した「ブランチ・プロジェクト」は、夏は「建物」に、冬は「乗物」になるという作品で、雪が積もったこの季節には個々のパーツを木製の「そり」として使うことができる。

川西町中仙田で開かれた雪祭りに合わせて、45台のそりのうちの2台を倉庫から運び出し、お祭り会場で遊んでもらうことにした。1台は低い座席が前後についた2人乗りタイプ、もう1台は昔の小学校の椅子をかたどった1人乗りタイプである。長さはおよそ90cm、幅は50cm程度、ずべて木でできているために結構重い。

会場には雪で長さ20mほどのスロープがつくられ、例年、子供たちに人気のゴムタイヤのそりに混じって私たちの木のそりもおそるおそる参加した。最初は自分たちで乗って滑っていたが、左曲がりのカーブをうまく曲がりきれずにコース脇のバンクに乗り上げて転倒してしまう。重いので、体重を横にかけてもなかなかコントロールできないのだ。

何度かチャレンジしてから昼食のためにちょっと場所を離れて、戻ってくると、木のそりは子供たちに大人気となっていた。最初は様子見をしていたのが、私たちがいなくなった隙に乗ってみてくれたのかもしれない。2人乗りタイプに兄弟で乗ったりして、ハンドリングもなかなかのもの。子供の方が重心が低いし、すぐに身体で覚えてしまうのだろう。


しばらくしてから、椅子のついた1人乗りタイプにもチャレンジし始めた。肘掛けのない椅子なので、これに座って滑るのはかなり怖いかなと思っていたのだが、慣れればこれもうまく滑りだした。椅子の背もたれに手を置いて、そりの後ろに立って乗るスリリングな乗り方も編み出された。

お祭りは雪上結婚式をメインイベントに、ドラム缶を改造したハンドメイド焼き芋マシンが活躍したりする、地元の方々の手づくりの味わいだった。一昨年の夏に「建物」づくりで手伝っていただいた方々にも再会することができた。冬こそ妻有、の暖かさを満喫した1日だった。


上の写真は、2006年の芸術祭でのワークショップのときのもの。「そり」が裏返しに連結されてアーチ状になっている。地元の仙田小学校の出張授業なので、今日そりで遊んでくれた子供たちもこのなかに何人かいるはずだ。