建築と宇宙人


前川國男さんが設計したという学習院大学の中央教室が建て替えられることになり、最後の見学会へ出かけた。ピラミッド形をしており、その名も「ピラ校」と呼ばれているそうだ。

現地に着いたらちょうど「ウルトラセブン」の上映会が始まるところ。第29話「ひとりぼっちの地球人」の回にこの校舎が登場するので、監督も呼ばれて記念トークショーと上映会ということになったらしい。別れを惜しむ学習院OBやら、ウルトラマニアやら、建築系やら、連休のおでかけ家族までごちゃ混ぜ状態だ。

1968年放送作品ということで特撮もいい味を出していたが、1960年竣工のピラ校は当時はまだ新しい斬新な建築だったのだろう。話のなかではセブンの一撃で戦闘開始まもなくあっさりと全壊、自分たちが今いる建物が画面のなかで壊されるという奇妙さと、そのあまりのあっけなさに観衆は皆、思わず笑ってしまった。

上映会終了後、監督のトークがあり質問会へ。「昔の学習院の女子大生はあんなOLみたいなファッションだったのか?」「いえ、あれは京南大学ですから。」「話のなかで校舎が壊されてしまったが、学習院から抗議はなかったのか?」「特に事前にお断りはしなかったですねぇ。抗議もなかったです。」「ポインター(ウルトラ警備隊の車)はどうやって撮影現場まで運んだのか?」「ウイングがあると公道を走れないんで、外して後部座席に積み込んで、なんとか自走していきました」

最後に小学生くらいの男の子が声を上げて聞いた。「最後、宇宙人はどうなっちゃったんですか?」
市川森一脚本のストーリーは、宇宙人を信頼して協力していたひとりの地球人が、宇宙人の真の意図を知って苦悩するという人間ドラマで、確かに敵役の宇宙人はどうなったのか分かりにくかった。

「宇宙人はね、消えちゃったの。」監督の答えは明快だった。そう、宇宙人も、建築も消えちゃうのだ。そもそも壊されるために生まれてきたのかもしれないのだ。