ツバメ号ふたたび



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近所の図書館で廃棄処分にするリサイクル本のコーナーから、アーサー・ランサムの「ツバメ号とアマゾン号」シリーズの1巻から3巻までを貰ってきた。1920年代のイギリスの良家の子供たちが夏休みに体験する冒険物語。ヨットで探検したり、地元の子供たちと触れ合ったり、のどかでわくわくする雰囲気が好きで小学校の図書館で借りて読んで以来のファンなのだ。

シリーズ全12巻の後半では大西洋を横断する(「海へ出るつもりじゃなかった」(第7巻))など物語の舞台も拡大するが、物語前半の中心となるのはイギリス湖水地方ウィンダミア湖という南北に長い湖である。子供たちによって、この湖は世界の縮図に見立てられる。湖の北端は北極、南端は南極と見なされ、湖に流れこむ川はアマゾン川、湖を望む山はヒマラヤのカンチェンジュンガ、最も賑やかな湾はリオ湾となる。

この世界地図を描いていくのが子供たちが自らに課した夏休みの使命なのだ。空間的には世界の果てまで、時間的には夏休みが終わるまでに(すなわち両親が迎えに来るまでに)地図を完成させることができるのか?という関心が物語を展開させていく。来年もまたここに来られるという安心感と、同じ場所のイメージが違う体験によって毎年書き換えられていくという進歩感が併存する物語世界だ。