ゲーリー、コルビュジェ、シザ

kasta22007-06-13



ここ数日間に、建築家に関する映画と展覧会をはしごした。

まずは、建築家フランク・ゲーリーの創作風景を友人である映画監督シドニー・ポラックが撮ったドキュメンタリー ”スケッチ・オブ・フランク・ゲーリー”。

ゲーリーがアシスタントと並んで模型に向かいあって座っている。彼の指示に従ってアシスタントが銀色の厚紙をはさみで切り刻み、折り曲げて、模型に貼付けていく。手振りはきわめてラフだ。いったん貼付けた紙もべりべりとはがされて、少しいじってから、また貼付けられる。そうしているうちに、ゲーリーのイメージがだんだん固まっていくのだが、そのイメージはきわめて明快で小難しい理屈はない。お客さんを優しく迎え入れるカーブした壁とか、ヨットが好きな施主のために帆のイメージをとか、とにかく明るい。そして、ゲーリーのイメージを的確に捉え、実現するための3Dデータ化のテクノロジーもすごい。徹底的に個人的だが、同時に徹底的にチームワークの人なのだ。


次に、森美術館ル・コルビュジェ展。今展の目玉は、原寸大のモックアップでユニテ・マルセイユカップマルタンの小屋を再現しており、実際になかに入って体験できること。特に、ユニテの廊下から子供室へと続くスペースのスケール感が印象的。間口3.66mを2分割して2つの子供室をつくっているから部屋の幅はほぼ1.8m、天井高さも2.26m(大人が手を伸ばして触れる高さということでモデュロールに従って決定)とけっして大きくはないのだが濃密な空間だった。
展覧会の最初に展示されている最小限自動車のスケッチに、couche(簡易寝台)という文字とともに車のなかに寝転がった人が描かれている。最後の展示のカップマルタンのわずか8帖ほどの小屋では、ベッドから窓、天井まであらゆるものが相互に関連しているようなスケール感で設計されている。身体スケールから出発して都市スケールまで拡大しながら、けっして身体のスケールを忘れなかった人だ。


最後にギャラリー間に足を伸ばして、アルヴァロ・シザ展へ。サーペインタイン・ギャラリーのプロジェクトや、リスボン万博のパビリオン、教会から住宅、給水塔までバラエティに富んだ内容。シザ自身の設計作品の多様性を見せたかったようで、展覧会全体としての方向性のようなものはなかなか見えてこないのだが、むしろスケッチという方法で敷地や規模、プログラムの多様性に自在に対応していることが印象的。建物から犬から顔からワイングラスまで、とにかく描く。一枚の紙に混ぜて描く。なにを見て、どう捉えたかを、とにかく記録し続けている人だ。