分校の跡地で

kasta22006-04-24

今回の妻有の作品を設置する場所は、新潟県十日町市田戸という集落の、廃校になってしまった分校の跡地です。集落の真ん中が平らな空地になっていて、周囲には桜の巨木が何本も残っています。木造2階建ての校舎は既にここにはないのですが、実は100mくらい行ったところに現存しています。地元の建設会社がいらなくなった校舎をトラックやブルドーザーの格納庫用に譲り受け、雪の上をしずしずと曵き家していったのです。会社用、とはいえ、社長の押木さんはその校舎で学んだ方なので、校舎に思い入れがあったのかもしれません。
まだ雪が1mくらい残るなか、桜はもうつぼみがほころび始めています。例年ならば、ウソという鳥がつぼみを食べてしまうらしいのですが、今年は遅くまで雪が残る異常気象のせいなのか、花が見られるかもしれないと田戸の区長の高橋さんも期待されているようでした。
田戸は、十日町から上越方面へ抜けるかつての往来の峠にある集落で、茅葺きの家と棚田が美しい集落です。けれど、いまは10世帯30人ほどになり、ご高齢の方がほとんどなので遠からず住む人がいなくなってしまうかもしれません。80人も同級生がいた押木さんの時代も遠く、子供がいなくなり学校もなくなってから長い年月が過ぎています。今回の僕の作品は、その場所にこの夏もう一度、分校をつくろうというものです。アートで分校をつくる、分校をつくることがアートになる、そう考えて、けっして感傷的な気分ではなく、むしろ挑戦的な気分で臨んでいます。