荒野と都市と森


車で自由が丘へ行った帰り、世田谷美術館の「ダニ・カラヴァン」展へ寄り道。パリの大都市軸や、スペインの海辺にある「パサージュ ウォルター・ベンヤミンへのオマージュ」で知られる環境彫刻家だが、今回の展覧会では若い頃の絵画から舞台美術を経て環境彫刻へ至る歩みも見られる。

驚いたのは、日本にもたくさんの作品があること。

 札幌芸術の森     →http://www.artpark.or.jp/index.html
 室生山上公園芸術の森 →http://www.city.uda.nara.jp/sanzyoukouen/concept/index.html
 霧島アートの森    →http://open-air-museum.org/ja/

森尽くしですね。カラヴァンの作品自体は荒野にも都市にもあるのだが、日本に来るととたんに「森」になってしまうところに、日本の野外芸術の位置づけが伺える。札幌は1〜3月の間はカンジキを履いて見に行くのだとか。「隠された庭への道」という作品名だし、これは面白そうだ。

 

  広い空間と狭い部屋


天気もよいので、自転車でGAギャラリーの「オスカー・ニーマイヤー Form&Space」展へ。大きく引き延ばされた写真とスケッチのみの展示。写真は外観が主で、空撮も多い。インテリアの写真は、オーディトリアムなどの大空間をばさっと写すか、うねる階段やスロープを写したもの。実際に体験したらとても楽しそうだけど、歩き回るだけで体力がいりそう。

並びのロードバイク専門店 map sportsを覗いてから、ギャラリー間へ。こちらは安藤忠雄の「挑戦-原点から-」展。目玉は、住吉の長屋が原寸大で再現されていることで、内部に入って空間を体験することができる。大学2年のとき設計基礎の授業でこの1/50模型をつくったけれど、実際の部屋は思ったより狭かった。玄関を入ってすぐの部屋がリビング的に、中庭をはさんだ反対側の部屋がダイニングキッチンとして使われているようだ。中庭に面した開口部はガラスの扉なので、両部屋と中庭は開けば一体になるわけではない。部屋はあくまで部屋、中庭はあくまで中庭、その独立した感じが印象的。その意味では、会場の再現にもガラスを入れて欲しかったな。

 

  ティファニーで朝食を


村上春樹の新訳版が出たので、初めて読んでみた。そう言えば、映画も見たことがない。カーヴァー以降、「キャッチャー・イン・ザ・ライ」「ロング・グッドバイ」「グレート・ギャツビー」と村上訳シリーズを読み続けているけれど、だんだん好みから外れて行くような...。

以前に、大橋歩さんが雑誌Arne村上春樹の家を取材していて、家の中が見事に整理整頓されているのがいかにもイメージどおりだった。自転車やレコードなんかがきちんと置き場所を確保されて大切に扱われている感じはとても暖かな感じがする。

 

 

  横トリ&BankARTLife2


友人たちと1日かけて、横浜トリエンナーレとBankARTLife2を周った。はじめに、新港ピアのメイン会場。西澤さんによる十和田市現代美術館のようなホワイトキューブが並ぶ空間構成のなかに、映像もインスタレーションもおさめられている。「時間」という全体コンセプトのせいか、捉えどころのない作品が多く、ペドロ・レイエスの人形劇のような作品に人気が集まっていた。

赤レンガ館の作品や、運河パークのイエノイエを見てから、BankART1929の「心ある機械」展へ。横トリと打って変わってクラシカルな空間に、メカニックな作品群がばっちり決まっていて、文句なくカッコいい展示。メタルなマシーンのあとに登場する、地下機械室の機械に映像を投影した高橋啓祐さんの作品もクールな感じ。

タクシーに相乗りして、黄金町バザールへ移動。黄金スタジオ、日の出スタジオを駆け足で周り、北川貴好さんの昔のチョイの間に有孔板で面白い空間をつくりこんだ作品を見る。

BankART NYKに戻って「ルーフトップ・パラダイス」展へ。なんでも昼間の公開は駄目と言われたそうで、朝か夕方しか見られない。でも夕方の明かりのなかで、遊園地のようながちゃがちゃした屋上を周るのは楽しい。建築家の作品が多く、屋上農園というテーマにどう応えているかよく分からない作品もあったけれど、会期の終わり頃に来てみれば植物も育って、また違う雰囲気かもしれない。建築が、あるいは建築家が、リアルな植物と渡り合っていけるのかどうかが問われるのだろう。

 

  湾岸17:35


東京ビッグサイトに行ってきた。帰りは、17:35発の日の出桟橋行き最終の水上バス。いくつか橋をくぐると視界が開け、夕焼けに染まるレインボーブリッジが見えてきた。はじめは進行方向の先に見えていたのが、だんだんと横に見るようになり、吊橋のケーブルに沿ってついた明かりと、橋脚をライトアップする明かりが眼の前に広がる。そのうちに夕焼けの色が少しずつ消えていき、ビルの窓の明かりが目立つようになってきた。

わずか25分のマジックアワークルージング、水上バスは最終便がおすすめです。

 

  古い家を壊したときの匂い


部屋を隔てる壁を抜いて、大きなワンルームにした。下地は竹と縄で編んだ小舞。それを土で固めて、仕上げは漆喰を塗った昔ながらの壁である。バール1本で半日もかからず1間半の壁がなくなったが、土煙が部屋中に立ちこめて拭き掃除するのに時間がかかった。残った土の塊は、古い家を壊したときの少し湿っぽい匂いがした。すっかり庭に撒いてしまったので、すぐに混ざってしまうはず。